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第3回 サミティヴェート病院スクムビット2012.11.01

Samitivej Sukhumvit Hospital(サミティヴェート病院スクムビット)
電話 66-2-711-8181(代表)
66-2-711-8122~8124(日本人相談窓口)
ファックス 66-2-391-1290
HP http://www.samitivejhospitals.com
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Q:まずはプロフィールから。
A:当院は1979年6月4日に開院しました。タイ語で「医師の集まるところ」を意味する『サミティヴェート』という病院名を、王族出身のククリット・プラモート元タイ国首相から賜りました。今日では、タイ証券取引所に上場しているタイ最大の病院グループ『バンコク・デュシット・メデイカル・サービス・グループ』に属しています。サミティヴェート病院グループは、その所在地にちなんで、『サミティヴェート病院スクムビット』『サミティヴェート病院シーナカリン』『サミティヴェートシーナカリンこども病院』『サミティヴェート病院シラチャー』と呼ばれています。今回は、グループの核となる『サミティヴェート病院スクムビット』を紹介します。
Q:貴院の特徴は?
A:『サミティヴェート病院スクムビット』は、日本国内の病院を除き、最も多くの日本人患者が来院する病院です。日本人が多く在住するバンコク中心部のスクムビット通りソイ49に位置しています。東南アジアでも有数の私立病院として厚い信頼をいただいています。ベッド数は270床で、400名以上の専門医師が在籍。特に『サミティヴェート病院小児科センター』は、タイ人はもちろんのこと、バンコクに居住する各国の駐在員からも、最も信頼できる小児医療機関として認められています。
Q:施設内の様子をお聞かせください。
A:院内感染防止のため、疾病診察と検診・予防接種のエリアを分けています。また、子供がリラックスできるように、当院独自の小児科ブランドマスコットとして『ドクター・ケア・ベア』を作成しました。さらに、自由に利用できる遊び場を設置したり、診察室のドアに動物の絵を描いたりしています。日本人の子供を持つ両親から、東南アジア特有の感染症や予防接種についての質問が多く寄せられるため、定期的にバンコクの日本人コミュニティに向けたセミナーを開催しています。施設内のテナントをみると、銀行、セブン‐イレブン、スターバックス、オーボンパン、ヤマザキパン、日本人患者や家族に好評の大戸屋などがあります。飲食関連の店舗では、入院患者の注文に応じて病棟までのデリバリーサービスも実施しています。
Q:得意とする領域は?
A:2007年に米国の国際医療認定機関JCIにより、医療・管理の質が国際基準を満たしていると評価され、認定を受けました。現在、JCIのクリニカルケアプログラム(CCPC)で5つ(急性心筋梗塞・ひざ関節症・腰痛・肺がん・脳卒中)の認定を受けています。今回は、そのうちの急性心筋梗塞とひざ関節症について紹介します。
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Q:急性心筋梗塞への対応についてお聞かせください。
A:胸の痛みを訴える患者が病院に到着すると、10分以内に心電図を撮る。急性心筋梗塞の場合には、90分以内に冠動脈ステント挿入治療を行う――という当院の基準があります。またフォローアップとして、栄養士が食事のアドバイスと相談を行う、愛煙家の患者には呼吸器科の医師が禁煙方法を指導、理学療法士が適切なリハビリを実施、といった具合に循環器科だけにとどまらず、さまざまな診療科と専門家がチームを組み、包括的なクリニカルケアを提供しています。心筋梗塞で倒れた患者が、これからの人生で心疾患を患うことがないように、その後も患者のライフステージの変化に合った治療計画を進めるように心がけています。
Q:ひざ関節症についてはどうでしょう?
A:『サミティヴェート病院スクムビット』は米国の病院に次いで、世界で2番目に変形性ひざ関節症のCCPC認定を受けました。この認定を受けた病院は世界で2院しかありません。変形性ひざ関節症の患者には、症状に合わせて、薬物投与を用いないリハビリテーション治療や体重マネジメントによる治療、薬物投与による治療を行います。そして、ダメージが大きくて、筋肉訓練や注射・薬物投与などの保存治療ができない患者では、「人工ひざ関節全置換術」による外科手術を実施します。人工ひざ関節全置換術は、ナビゲーションシステムといわれる手術支援装置を用いて行います。この装置の導入により、手術部位の浸襲を最小限に抑え、患者の負担を軽減できる(低侵襲性手術)とともに、正確でより安全な手術を行えるようになりました。
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Q:人工ひざ関節全置換術のメリットは?
A:人工ひざ関節全置換術のメリットに、手術後の傷跡が小さいことが挙げられます。従来の皮膚切開と比べ、小さな切開で済み、傷跡も目立ちにくくなります。また、早期に立位がとれ、歩行訓練を早期に開始できます。特に高齢者の場合は、術後ベッドに長期間寝ていることによる筋力低下や床ずれの併発、さらには認知症を引き起こす場合もありますが、この術法によって早期に歩行訓練を行うことで、それらの合併症を予防できるようになりました。術後については、医師が患者の回復を見守りながらアドバイスすると同時に、患者にセルフケアプログラムという手引きを渡して、患者自身が日常生活の中でひざのケアやマネジメントを行えるように指導しています。そうすることで、ひざがより自然に、より早く回復し、その後の再発予防にもつながるのです。
Q:他に得意とする領域は?
A:『サミティヴェート病院スクムビット』は1999年、WHO(世界保健機構)とユニセフから「赤ちゃんにやさしい病院」として認定された、タイ国唯一の私立病院です。これまでに多くの在タイ、在近隣諸国の日本人女性が当院で出産しています。産科医は担当医制で、妊娠中の検診・診察・出産から産後検診までを一貫して担当します。また、産科医・小児科医・新生児専門医・麻酔医が24時間体制で待機。出産入院病棟には新生児集中治療室(NICU)を併設しています。分娩室はリラックスしてお産に臨めるとともに、利便性と安全性を十分に考慮して設計されています。赤ちゃん誕生という大切な時を夫婦が一緒に過ごすこともできます。出産後はすぐに母乳をあげることもできます。また、LDR室は陣痛(Labor)、分娩(Delivery)、回復(Recovery)までのすべてに対応可能。状況が許す限り、パートナーや家族が立ち会うこともできます。アクティブバース室は、フリースタイルで出産できる分娩室です。水中分娩用バスタブをはじめ、チェア・はしご・いきみ綱・三角枕・バランスボールなどの設備が充実しており、本人に合った体勢でお産できます。好みのアロマや音楽で部屋を満たすことも可能。こちらも状況が許す限り、パートナーや家族が立ち会っても構いません。
Q:不妊治療にも注力しているようですね。
A:なかなか子どもが授からない、という悩みを抱えている方の相談や治療を幅広く行っています。日本人が通いやすいエリアにある当院では、タイで不妊治療を決意する日本人夫婦も多くみられます。一般不妊治療から人工授精、体外受精、顕微授精、未成熟体外培養法、胎盤胚移植、卵子・精子の凍結保存といった高度生殖医療までを提供。女性・男性それぞれのための不妊治療を行っています。
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Q:日本人患者の受け入れ状況は?
A:日本人患者は1日外来350人、年間で延べ11万人にのぼり、患者の5人に1人が日本人です。このような状況から、当院のマネジメントも日本人マーケットに注力しています。日本人患者へのサービスとして、外来棟1階に日本人相談窓口を設置。約20人の日本語通訳が、診察時の通訳や様々な手続きの案内を24時間・年中無休で行っています。日本語を話す医師も10人ほど在籍し、通訳を介さずに日本人患者を診察しています。また、日本語を勉強して、日本人患者にサービスを提供したいと考える医師や看護師も多く、医療に関する日本語学習カリキュラムを常時開いています。
Q:近隣諸国からも日本人患者を受け入れていますね。
A:当院はタイ在住の日本人だけでなく、近隣諸国に在住している日本人の医療の拠りどころとなっています。近年では、ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー・インドなどへの日本企業進出や日本人観光客の増加に伴って、当院を受診する日本人が増えています。2011年には、タイやタイ近隣諸国に在住の日本人に対する医療救援保護や健康管理の功績が認められ、在タイ日本大使館から表彰されました。
Q:帰国する日本人患者のサポート体制は?
A:日本の病院への転院が決まった患者については、当院の担当医をはじめ、医療搬送チームが支援します。バンコク国際空港までは、当院の救急車とストレッチャーを使用して航空機まで送ります。要望に応じて、日本の転院先まで当院の担当医や医療搬送チーム、通訳が同行することも可能です。また、バンコク・スワンナプーム国際空港内にはサミティヴェート病院のクリニック2院を開設。入国イミグレーション前のDコンコース・ゲートD6と、空港ターミナル内の3階レストラン街にあります。さらに、当院の救急車は空港内滑走路まで通行できる許可を取っていて、緊急時・搬送時には飛行機に救急車を横付けできます。そのほかにも、予期せぬ治療のためにタイ国内での滞在が長くなり、滞在ビザの申請が必要になった患者や付き添いの家族に対して医療ビザ取得を支援するなど、様々なサービスを展開しています。
Q:日本の医療機関との連携体制は?
A:日本の複数の医療機関と提携し、患者照会や各部門の医師・看護師の交換研修などを行っています。また、日本文化と日本語の研修を受けた看護師・医療従事者による『さくらチーム』を結成し、日本人患者へ質が高くて、心のこもった医療の提供を目指しています。
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Q:貴院の看板医師を紹介してください。
A:年間100ケース以上の不妊治療を手がけるブンセーン医師は、タイの不妊治療の第一人者。タイで産婦人科学と不妊治療を専攻後、オーストラリアで不妊治療を専攻しました。タイ婦人科内視鏡検査学会、タイ不妊治療学会、タイ王国産科医・婦人科医カレッジなどの会員です。不妊治療、腹腔鏡検査法、ヒステロスコピー手術で20年近くの経験を持ちます。「できるだけ自然妊娠での治療を」がブンセーン医師のモットーです。
Q:そのほかには? A:当院の小児科医師の多くは、タイ・アメリカ・イギリスなどの医学会の免許を取得。アメリカやイギリスでさらなる専門資格を得た医師をはじめ、40名の小児科専門医師が診察に当たっています。各医師の診療分野は一般小児内科から、小児消化器科・小児耳鼻咽喉科・小児内分泌科・小児アレルギー科・小児脳神経科・小児心臓科・小児腎臓科・小児感染症科・思春期精神科・発達行動小児学等までの様々な分野に及びます。
Q:今後の方針・計画は?
A:2015年のAEC(アセアン経済共同体)創設に向けて、タイ国内だけでなく、アセアン域内での競争力をさらに高めなければなりません。シンガポールやマレーシアなどの競合相手に優るサービスやホスピタリティを提供できるように、これまで培ってきた海外における日本人への医療サービス提供のノウハウを集約し、当院の幹部や医師たちの支えのもと、ハード・ソフトの両面を強化する戦略を立てています。
取材協力者
松尾高人 氏
Director- Japanese Division
上坂みづえ 氏
Assistant Manager- Japanese Marketing Division