有識者による医療機関向けコラム 医療機関の国際化

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JCI認証のメリット・デメリット2012.06.01

亀田総合病院に引き続き、2011年3月に、NTT東関東病院も取得をして、認知が高まっているJCI(Joint Commission International)という組織がある。
JCIはTJC: The Joint Commissionの中の組織であるジョイントコミッションリソース(JCR)に属する組織である。 ではTJCとは何か。TJCは、第三者の視点から医療機関を評価する民間団体であり、1910年代に米国、ハーバード大学外科医のコールドマン教授が、「自ら行っている診療行為を第三者的立場にいる別の専門医、外科の専門医に評価をしてもらいたい」と、考えたのが誕生のきっかけと言われる。
設立においては、米国病院協会や医師会、米国厚生省のサポートもあったが政府からは独立した第三者組織である。むかしの、JCAHOといったほうがわかる人もいるかもしれない。
2009年においては、TJC全体の職員が4000人であり、全米の病院の約80%、病床数で言えば95%をカバーしている。
この認証は、米国内での医療組織などへの認証を行うものである。そこが、1990年代の末から、世界に認証の幅を広げたのがJCIの展開である。たとえば、韓国では、国際ハブ空港を目指すインチョン空港の近郊に人口260万人、ソウル、プサンに次ぐ韓国第3の都市のインチョン市があるが、そこにあるイナ大学病院はJCI認証を取得している。


認証のメリット
日本の医療機関が国際認証機関のJCIで認証をうけるメリットは何か? 医療観光とも訳される、海外からの患者受け入れのメディカルツーリズムであろうか。
JCIの親組織であるTJCの米国内認証が、支払い側である保険者へのメリット追求、質改善、および医療界のスタンダードといった趣が強いのに比べ、JCIの認証は差別化の意味が強い。すなわち、この認証の意味が消費者あるいは患者に対してはブランドの意味があるのだ。つまり、JCIの認証の意味は、質改善と同時に消費者や患者への直接アピールにあるのである。
つまり、メリットはむしろ消費者や患者との関係にある。すなわち、海外に住む米国人であれば、国内と同じ認証を受けている医療機関を選ぶであろうし、米国企業もそういった医療機関との提携によって海外赴任の従業員へのメリットを考えるであろう。これは結果的に、保険会社がJCI認証病院との提携を選ぶことになるかもしれない。メディカルツーリズムにプラスの効果があることになる。
しかし、TJCもJCIも最近の目標は変わってきている。つまり、医療機関の認証を必ずしも主業務ととらえずに、質改善や医療安全を推進する団体としての位置づけへの変化である。JCIという組織の目的は、患者安全や医療の質の向上という大命題のためにあるのである。JCIは、国際的に医療の質、及び安全の改善を図ることをミッションとしており、認証のほかに、コンサルティングや教育・出版などの事業を展開している。JCIのスタッフは、2009年時点で約150人であり増加中であるという。
つまり、JCIの本質は医療の質、中でも医療安全を追求する組織なのである。
逆にJCIはメディカルツーリズムを行う病院だけ、という言い方は大きな誤解である。むしろ、メリットは、医療安全文化の育成、世界的なブランド力になるといってもいい。


JCI認証のデメリット
逆に、デメリットは何か?認証であるから、取得することに大きなデメリットはない。しかし、次回に取得の方法や費用を触れるが、やはり金額であろう。また、ISOといった他の認証との兼ね合いも考えねばならない。また、手間も必要である。しかし、この手間は、逆に言えば、院内の安全文化といった組織づくりの手間とも言えるのである。

真野 俊樹
昭和62年名古屋大学医学部卒業。
医師、医学博士、経済学博士、日本内科学会認定専門医。
平成7年米国コーネル大学医学部研究員、その後、外資系製薬企業、国内製薬企業のマネジメントに携わる。
その後昭和大学医学部公衆衛生学専任講師、大和総研などを経て、多摩大学統合リスクマネジメント研究所教授。名古屋大学医学部客員教授。専門は、医療・介護経営・経済。
連絡先:mano@tama.ac.jp